ボルボXC60ディーゼルが遅れて上陸。熟成したシャシー性能を味わいたい
掲載 更新 carview! 文:石井 昌道/写真:菊池 貴之
掲載 更新 carview! 文:石井 昌道/写真:菊池 貴之
今どきのディーゼルは音・振動が低く抑えられ、昔のうるさかったイメージが完全に払拭されているのは半ば常識だが、XC60 D4はそのなかでもひときわ静かだ。ディーゼルの音・振動が気になるのは、低回転である程度の負荷をかけたときのノック音で、ゼロ発進時やそんなに急ではない加速時が耳につきやすい。その状況でもXC60 D4はほとんど気にならない。神経を集中して耳を澄ませば「たぶんガソリンじゃない」とわかる程度で、アイドリングストップからの再始動もなめらかだ。加速が終了して低負荷な巡航に移れば音・振動は気にならなくなるばかりか、ガソリンよりも低回転で走らせるのでかえって静かでもある。
最大の魅力は充実したトルクとレスポンスだ。アクセルペダルをあまり踏み込まなくても、1880kgのボディをググッと力強く加速させ、速度コントロールもやりやすい。普通に走らせていると1500rpm付近を使うことが多いが、そこのドライバビリティが数あるディーゼルのなかでも良好な部類。緩い加速ならシフトダウンする必要もないから落ち着いたドライブフィールとなる。サッと加速したいときでも2000rpm台でたいていは事足り、3000rpmも回せば十二分に速い。街中に郊外路、高速道路でもほとんどの場面でそれ以上必要とすることはないだろう。
アクセルペダルを床まで踏みつけると4300rpm程度まで回ってシフトアップ。常用域での頼もしさからすれば、速さや切れ味は並レベルに感じられてしまうが、これはディーゼルの宿命。スポーティさや伸びの良さを求めるならガソリン車にするべきだろう。ちなみにT5のエンジンは低回転域のトルク感やドライバビリティがD4ほどではないにしろ、ガソリン直噴ターボとしては秀逸。それでいて回したときの爽快感は格段に上ときているから選択はちょっと悩ましい。日常域での扱いやすさや燃費および燃料代まで含めればD4に軍配があがるが、たまには積極的にアクセルを踏み込んで楽しみたいという人はT5も検討するべきだ。
いずれも、ボルボの最新パワートレーンの実力は侮りがたい。音・振動、ドライバビリティ、パフォーマンスとも世界トップレベルであるのは間違いなく、優秀なドイツ勢ともタメを張る。ドイツのディーゼルはボッシュのインジェクター(燃料噴射装置)を採用するが、ボルボはデンソーのi-ART。日本のサプライヤーがいい仕事をしているのは喜ばしいことでもある。
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